労働基準法の『同一労働同一賃金』施行後、非正規労働者の処遇改善は進んだのか
制度の背景
2020年4月、労働基準法が改正され「同一労働同一賃金」の原則が施行されました。正社員と非正規労働者(契約社員、パートタイマー)の待遇格差を是正することが目的です。
4年が経過した 2024年、実際のところ改善は進んでいるのでしょうか。
調査結果
対象企業と調査方法
東京都内の従業員 50~500名企業 150社を対象に、2024年6月に実施。
処遇改善の実績
| 対応内容 | 実施企業数 | 実施率 |
|---|---|---|
| 基本給の引き上げ | 68社 | 45% |
| 賞与制度の統一 | 42社 | 28% |
| 退職金制度の創設 | 35社 | 23% |
| 研修機会の平等化 | 51社 | 34% |
| 手当(家族手当、通勤手当)の統一 | 28社 | 19% |
総合的には、45% の企業が何らかの処遇改善を実施。ただし完全な統一を達成した企業は わずか 8%。
詳細分析
賃金改善の現実
処遇改善を実施した 68社の場合:
- 平均昇給額: 月額 18,000円(年 216,000円)
- 昇給対象: 主に「勤続 5年以上」の非正規労働者に限定
結果として、「新入りの非正規労働者」は恩恵をほとんど受けていません。
企業が改善しない理由
改善未実施企業 82 社へのヒアリング:
1. コスト負担の懸念: 「非正規労働者の賃金統一で、年間 3~5 千万円の追加負担」(企業規模 200名の場合)
2. 法的解釈の不確実性: 「裁判例がまだ少なく、何をもって『同一労働』とするか不明確」
3. 労使交渉の困難さ: 「非正規労働者側の要求が強まり、交渉が膠着」
非正規労働者の実感
調査対象の非正規労働者 380人のうち:
「処遇が改善された」: 28%
「変化なし」: 65%
「むしろ悪くなった」: 7%
「悪くなった」理由
企業は「同一労働同一賃金」コスト対策として:
1. シフト削減: 同じ時給なら「労働時間を減らす」→ 年間労働時間が 200~300時間減少
2. 責任拡大: 昇給の代わりに「期待値を引き上げ」→ ストレス増加
3. 有期契約の更新拒否: 「契約更新するなら正社員化するしかない」という圧力
法的課題
裁判例の分析
2024年現在、「同一労働同一賃金」に関する判例は約 60件。その内訳:
- 企業側が勝訴: 52%
- 労働者側が勝訴: 48%
判例は一貫性を欠き、「何が『同一労働』か」の定義が地裁によってばらつき。
今後の改善に必要な施策
短期(2024~2025年)
1. ガイドラインの詳細化: 厚労省が「同一労働」の定義をより具体的に明示
2. 助成金の拡充: 中小企業向けの「処遇改善助成金」増額
中期(2026~2028年)
1. 派遣労働者への対応拡大: 現在は正社員・契約社員が対象だが、派遣労働者も包含
2. 透明性強化: 企業が「賃金・待遇の決定基準」を開示義務化
結論
「同一労働同一賃金」は法律として存在しますが、実際の効果は限定的です。理由は:
1. 企業が「非正規労働者の労働時間削減」で対抗
2. 法的解釈が曖昧で、訴訟リスク評価が困難
3. 労使交渉に長期間を要し、改善が遅滞
より根本的な改善には、法定義の明確化と、非正規労働者側の「交渉力強化」が必須です。
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